小説「バブル」を読んで

山口ミルコさんの書籍「バブル」を読んだ。1月に誕生日を迎え56歳になった私にとって、勇気をもらえたし、心がとても癒された。


私は、ミルコさんより、3つ年下。
1996年に長男出産のために8年間の正社員勤務の仕事を辞め、会社員としてバブル時代を少しだけ経験した。
時事ネタを織り交ぜながら書かれているこの小説は、バブル時代の会社員人生がどんな状況だったか、痛いくらいに伝わってきた。
私はというと、専門学校を卒業後に正社員として勤務していた会社のことが大好きだった。できれば仕事を続けたかった。
あの頃、中洲という福岡の繁華街に、上司のおごりで3次会まで梯子し、帰りはタクシーチケットで午前様。
翌朝、睡眠不足でも、多少二日酔いでも朝5時起きし、ワンレングスの長い髪をシニヨンに束ねて、相乗りのタクシーに飛び乗って出勤していた。
そんな会社員時代の頃を懐かしく思い出しながら読み進めた。

同世代の方々へのインタビューは、「あの時代と今」をテーマに、リアルな気持ちが語られていた。
今も会社勤めをしている50代の女性、そして、いろんな理由で仕事を辞め、これからどんな生き方を選択していこうかと悩んでいる女性。
様々な背景を持つ女性たちに向けて、自分を信じて穏やかな気持ちで生きていこうとそっと寄り添ってくれるようだった。

この本を拝読したきっかけは
今年の8月に一人で参加した「国際女性ビジネス会議」。
偶然にも同じテーブル(一番前の特等席)で最初に話かけてくださったのが著者の山口ミルコさん。(すごい!)

このビジネス会議への参加を決めたのも偶然の出来事。
コロナ禍の後、コツコツ貯めていたANAマイルが東京片道分たまったので、池袋から茅ケ崎に引っ越した妹に会いに行くことにした。
せっかく東京行くなら、何か学びにつながるイベントがないかと検索していたら、ヒットしたのがこの「国際女性ビジネス会議」。
40代前半に勤務していた「男女共同参画センター」の仕事を通じて、この会議のことを知ったのだが、
東京のラグジュアリーホテルを会場に毎年開催されていて憧れのまとだった。
その当時は子育て中で余裕がなく、参加料が高額であきらめていた。いつか参加してみたい!という思いだけは胸の奥にしまっていた。
あれから10数年が経ち、26年間同居していた義父(90歳で他界)を2年前に見送り、嫁という役割はまあ果たした。
二人の子どもも大学を卒業して社会人になった。義父の介護のために在宅勤務に転職していた夫の仕事も落ち着いた。
やっと日々の生活に精神的にも金銭的にも多少は安心できる状況になって、なんとか参加できる!と思えたのだ。
そう思えた自分が少し誇らしかったしうれしかった。

当日は、特等席の一番前に座る絶対に!と意気込んでいた。
なぜかというと、偶然に読んだ川原たくみさん(片付けの近藤麻理恵さんの夫でありプロデューサー)のツイッター(X)で、イベントに参加するなら一番前!という投稿を読んでいたのだ。
会場に早めについて、300席くらいある会場の一番前のテーブル、しかも、佐々木かおりさん(主催者)と憧れの登壇者から最短距離の席を確保することができた。(やったー!嬉しい!)そして、一番乗りと思っていたが、もっと早い方がいて、その先着者がミルコさんだった。

私は福岡から参加しているし、初めてだったし、なんだか粋がっていたし、緊張していた。
でも、ミルコさんは自然体で声をかけてくださり、その一瞬の会話でリラックスできた。
不思議と穏やかで包み込むような優しさがある方だった。
それから会議が始まり、4時間くらいの間、始終楽しむことができた。
ミルコさんとのたわいない会話があったからだ。

当日に名刺をいただいたが、名前でネット検索はしていなかった。ご紹介いただいた書籍「バブル」も読んだことがなかったので、Amazonで検索して買い物リストに入れた。その時点では、まだポチッと押していなかった。
しばらくたってから、ミルコさんのフェイスブックで、ご自身のキャリアについて大学生向けに書いた文章があるので読みたい方には送りますとお知らせがあった。勇気を出してメッセージをしてみた。

しばらくして原稿が届いた。
そして、ミルコさんは、有名な書籍の敏腕プロデューサーだった方で、この「バブル」という小説は、2018年4月から2019年8月まで「婦人公論」で「バブル 〜 ボスと彼女のものがたり」という題名で連載されていた著者だったことを知った。その原稿を読ませていただき、もっといろんな文章に触れてみたいと思った。それからすぐに、アマゾンの購入リストに入れたままだったボタンを躊躇なく押した。

そして、本が届いた。その日からすぐに読み始めた。
バブルを経験した50代女性の心のリアルが伝わってきた。共感という感情が私の中にじわじわと行きわたっていった。
あのがむしゃらさはなんだったんだろうとか、あの頃の上司とのやり取り、仕事を辞めたときの悔しさや後悔。
今思えば、あれは、マタニティハラスメントだよなとか。いろいろ脳裏によぎってくる。
そのあとの再就職の厳しさ。理不尽に思えてくる子育て中の女性に対する社会の厳しい視点。いろんなことが思い出された。

読み終えた後、これまで一歩一歩転職しながら進んできた道を、とても肯定的にとらえている自分がいた。
これからも、自分を信じてあきらめないで、未来が不安でも今を楽しみながら生きていこうと思えた。

私の心に響いた文章

勤め人だった時にはまったくもって思いつかなかったけど、たとえ既存の組織の中で仕事をしづらくなっても、そこから一歩を踏み出す勇気と行動は、のちの自分に実りをもたらしてくれる。それは、天のお導きのような、あんがいしぜんなことだったかもしれない。

小説「バブル」より

「バントプレイヤーからソリストへの転向」それを思いついたらぐんと気がラクになった。しかしここから私は学ばねばならなかった。孤独と本気で向き合わないかぎり、そのステージはいつまでもやってこないのだということを。

小説「バブル」より

人生
とにかく平たんではないし、山もあるし谷もある

辛いなしんどいなと思っている渦中を、そこをなんとか乗り越えると
その経験は必ず糧となり、未来への一歩に、勇気に、つながって行く

何者かになろうと思いすぎず、力まずに選択し行動していく
その先にきっと想像していなかった未来が待っている

☆光栄な出会いに感謝いたします